スーパーふどげりさ

ふどげりさとはッッッ!!!神代より行われている行為のことである!!!!!

特撮オタクVS『TENET テネット』

※ネタバレほぼなしです

 

 

『TENET テネット』を見た。「話が難解」ということは耳にしていたので、まあそんなに理解できないだろう、と思って望んだが、まじで思った以上にさっぱりわからんかった。逆行とかの理屈以前に、スパイパート?でも今なんのために何をやってるのかもよくわからなかった……まあこれは俺の理解力の低さもあるんだろうけど……
しかし、「話はわかんないだろう」と思いつつも見に行ったのは、「映像が凄い」という評価をしばしば聞いたからであった。

そういう感じで映像面には大きく期待していたのだが、実はそちらにおいても期待していたほど凄いとは思えなかった。主人公が逆行の世界に初めて入ったあたりでは凄い!となったが、目が馴れてきた終盤は驚きや感嘆よりもスタッフやキャストの苦労を思う心のほうが強くなってしまった。
ノーランはCGをなるべく使わない実物主義で知られており、今回も逆行の表現に、キャストに本当に逆の動きをしてもらうなどのことをやってる。車がバックでカーチェイスしたり、後ろ向きでダッシュしたりしたというのだ。俳優が言葉を逆に話したシーンもあるという。また、逆行ではないが、本物の飛行機が建物に突っ込むシーンは見せ場のひとつだ。
ただ、「相当無茶しないと撮れない映像」ではあれ、裏を返せば「相当無茶すれば撮れなくもない映像」だけで本作は構成されていたのでは?
もちろん、逆再生は特撮以前のトリック撮影の基礎であり、それを使って大作に仕立てあげたノーランをさすがと言いたい気持ちもあるし(ある意味で、映画が100年前の原点に立ち返ったともいえる)、CGでは成し得ない実在感や質感が宿るのもわかる。たとえば、『ドクター・ストレンジ』の終盤でも本作に近いシチュエーションがあるが、確かに本作はCGっぽくなさはある。(ただ、これが「ノーランはCGをほとんど使わずに撮っている」という事前に知った情報によるバイアスがかかっている可能性も否定できない)
しかし、それでも、私は本作に実物撮影の限界を感じてしまった。「超大作でこんな低予算アイディア映画みたいなことできるのはノーランだけ」という感想もわかるのだが、どうしても「良くも悪くも」という留保はつけたくなってしまう。フィルムの逆回しを上手く行うために様々な工夫がされたとのことだが、根本的には「逆再生の映像を撮るには逆に撮る」というゴリ押しでは……とも思う。もっと言えば、SFXやVFXに頼ることで、もっと規模の大きい逆再生と普通の人が混ざった映像が展開できたのではないか。もちろん、それでは普通の大作映画になってしまうリスクもあるが……。

繰り返すが、本作は「超大作だが、実物にこだわって撮影した」という、今日のVFX全盛期において他の映画にはない魅力があることは確かだ。ただ、「実物では絶対に撮れないものを、できるだけ実物らしく撮るための創意工夫」およびその結果として現れた映像を愛している特撮のオタクにとっては、「無茶しないと撮れない映像」よりも「普通のやり方では絶対に撮れない映像」での驚きを見せてほしかった、というのも本音なのである。

 


余談1:それはそれとして、まあまずないだろうがノーランは今度は逆回しだけでなく早回しやスローにも挑戦してほしい。数億ドルかけた超大作で俳優ががんばってスローに動いてるのを見るのは絶対楽しいので……
余談2:一番凄いと思ったのは、予告にもある順行VS逆行の殴り合いだった。どれだけ綿密なアイディアの出し合い、プレビズ、リハーサルが繰り返されたことだろう!

 

参考文献とか:

youtu.be

 

indietokyo.com