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『シン・ウルトラマン』感想~あなたは新作なの?リメイクなの?~

3回、観た。面白かった。もしかしたら次もあるかも。

だが、なんだろう、このモヤモヤは……。

公開から2ヶ月近くが経ち、肯定・否定含め様々な評が出回ったが、やはり自分の言葉を紡げるのは自分だけだ。そう思って、今更『シン・ウルトラマン』の感想を書く。

特撮面

まず、弊ブログらしく?、特撮パートの映像面について。
この点について言及している人をあまり見ないのだが、本作はアナログ特撮を用いたシーンがかなり少ない。パンフレットによると、本作の特撮パートはほとんどがCGだという。ミニチュアを用いたと明言されているのは、巨大浅見のシーンくらい(ビルがパンチされるカットの内引きだろうか)。
あと、某所で、ネロンガのシーンで送電線も一部ミニチュアとか聞いたような……。ソースがある人、ご一報ください。
公開少し前、メインスタッフのクレジットが判明した時、特技監督の肩書きや、『シン・ゴジラ』で美術監督を務めた三池敏夫氏の名前がなかった(実際のエンドクレジットには、特撮パートの特殊美術で名前があったが、シンゴジより小さい役職ではあったであろう)時点で「もしや……」と思っていたが、当たってしまった。
シン・ゴジラ』では、今までのゴジラとは異なる、CGや実景合成を主体とした特撮パートが作品のリアリティに大きく寄与していたが、その一方で、ヤシオリ作戦時に壊されるビルの室内はじめ、要所要所で挿入されていたミニチュア特撮のカットがCGの不得意部分を補い、実在感を高めていたといえよう。
翻って『シン・ウルトラマン』には、そうしたアナログ特撮のカットが、『シン・ゴジラ』に比べてもかなり少なくなっている印象だった(まあ、気づいてないだけで実際は印象より多い可能性も大いにあるが)。

庵野さんも、樋口監督も、尾上准監督も、アナログ特撮とCGそれぞれのメリット・デメリットは熟知しているはず。そこから推測すると、本作のアナログ特撮の少なさは、やはり予算の少なさに起因するのでは? コロナ禍の延期に伴い追加予算が出たとはいえ、『シン・ゴジラ』より少ないことがほぼデザインワークスにて名言されている。

では、CGはどうか?
残念ながら、『シン・ゴジラ』に比べて、技術的にどうであるかはともかく、パッと見の印象としては、リアルさ・実在感に欠けているように思えてしまった。
もちろん、(多分)シンゴジより予算が少ないのにもかかわらず出物の量や特撮パートの時間・シチュエーションが単純に多い。デザインワークスで言及されている、公開延期に伴いスタッフが集め直しになった点なども含め、大小さまざまな苦労があったことだろう。しかし、リアリティラインをシンゴジより低めにしているとはいえ、「現実にウルトラマンがいる」と感じられるようなカットが少なかったのも事実。前述したミニチュア部分の少なさも、そうした印象に拍車をかけているように思える。

とはいえ、「大作邦画のクオリティで」「洋画的ではない」ウルトラマンを実現させたことは素晴らしいと思う。
今もって謎の映像『ULTRAMAN n/a』。あの映像のCGは非常にクオリティが高く、今もって色褪せないが、あれは生物的でヌメッとしたウルトラマンやクリーチャー然とした怪獣など、どちらかというと「洋画っぽい」センスで作られていたと思う。
対して『シン・ウルトラマン』は、フルCGではありつつも、初代に近く、そこから更に成田亨のデザインに近づけたウルトラマンや、ちょっとアニメチックな禍威獣・外星人など、洋画っぽさとはかけ離れている。
少々ナショナリズムぽい結論だが、日本的なセンスで一般向けの映像を作るという点に関してはしっかり成功していると思うし、「世界のマーケットに向けて日本的なイズムを持つヒーローを押し出していく」という、円谷プロ・塚越会長の姿勢とも一致しているように感じられる。
個別感想としては、ネロンガ戦のスペシウム光線ケレン味全開の樋口イズムが感じられて良かったし、ザラブ戦の躍動感は本作の白眉だ。メフィラス戦は……もうちょっとなんとかならなかったのかな……。ただ、音ハメは気持ちいい。


ところで、時々こういう意見も耳にする。「ぶっちゃけニュージェネウルトラマンのほうが映像凄くない?」と。
これに対しては、「ニュージェネは新しい映像を追求している一方、『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』当時の感覚を現代に再現しようとしているのでは」という反論(でもないか)が、しばしばなされる。
自分も、まあそんなところだろうと思う。
しかし、こうも思うのだ。「懐古主義じゃない?」と。

あなたは新作なの?

本作の「懐古主義性」は、特撮パートに留まらず作品全体を貫くものである。
そもそも本作は、『ウルトラマン』からいくつかのエピソードを抜き出し、現代的かつ一本の映画として筋が通るようにアレンジして繋いだような構成になっている。ザラブパートなんて、ほぼ「遊星から来た兄弟」まんまだ。
これは、初代ゴジラや84年版ゴジラのエッセンスを汲みつつ、全く新しいゴジラにもなっていた『シン・ゴジラ』とは対照的だ。
庵野さんはゴジラには相対的に思い入れが薄いのに対してウルトラマンはとても好きだから、原点をあまりいじくり回せなかったのかなーとか想像してしまうが、経緯さともかく、結果として「まあ、初代マンを「人間との友情」テーマに一本にまとめるならこうなるよな」という「妥当」感を覚えてしまった。「妥当」にも行けない幾多の作品からすると贅沢な悩みではあろうけど……。
初代マンの完成度は現代にもそのまま持ってこれる、という矜持が感じられるのは非常にグッとくるものではあるが……うーん……。まあ、ウルトラマンなんて一度も見たことないよ、という客も大いに対象にしてるものだから、このモヤモヤ感はオタク特有のものかもしれない。

リメイクなの?

「シン・ウルトラマンは初代マンそのまんますぎる」と書いたが、一方で、初代『ウルトラマン』特有の魅力を現代にそのまま再現できているかというと、それもやや疑問符がつく。
初代のもつ上品さ、牧歌性……etcは、高度経済成長期という時代背景があってのものでもあろうし、完全再現は難しいこともわかるのだが、それにしても、「何か」が決定的に違う気がする。
細かい要素の積み重ねが総体としての作品の印象を形作るのであり、細かく分析するのは容易ではないが……まずひとつに、禍威獣を生物兵器と位置付けたことによる、怪獣のバラエティ感の欠如。ひとつには、前の理由と連動するが、オムニバスのテレビシリーズと映画という形式の違いに起因する差異。ひとつには、民間人や子供のゲストの不在。ひとつには、中途半端にシンゴジに寄せたような、官邸や近隣諸国の描写……。
あるいは、私が初代マンを見たときに感じた「突拍子もない絵面が、確かな説得力をもって存在しているという、画的なセンス・オブ・ワンダー」も欠けていたかもしれない。前述の話にも繋がるが、「初代マンを現在の映像技術で作ると、まあ、こうだよな」的なか「妥当」感がここにも漂う。初代マンらしい新鮮さを得るためには、かえって初代マンを真似てはいけないという逆説……。
まあ、同じ人が作った複数作品ですら別の印象になるのだが、違う人が作った作品で印象が変わるのは当然かもしれない。庵野作品らしい理屈っぽさや、初代の小洒落たユーモアの代わりに挿入されるハードSF的な専門会話など、初代にはなくて『シン・ウルトラマン』にある魅力もある。
しかし、「新作」にも「リメイク」にもなりきれていないような中途半端さを、『シン・ウルトラマン』に覚えてしまうのであった。
原点へのリスペクトを込めることと、新しい作品を作ることは、相反するものではなく両立するはず。事実、ニュージェネのウルトラマンは、作品によってうまくいったりいってなかったりするが、それに挑戦してはいる。
しかし、『シン・ウルトラマン』に感じたのは、リメイクと新作の「両立」あるいは「止揚」ではなく「どっちつかず」であった。

これからのウルトラマン、そして、特撮

さて、円谷プロの親会社であるフィールズの中間決算資料に、一般向けウルトラマン作品をあと2つは作る計画があると書いてあり、ファンの話題を呼んだ。*1
また、デザインワークスには、実現するかは不透明なものの、シン・ウルトラマン三部作の構想があるという。
だが、推測するに、前者の一般向けウルトラマンと、後者の三部作は、部分的には一致しても全面一致ではないのではないか?
フィールズの中間決算資料によると、一般向けウルトラマンの予定は2024年と2026年。しかし、三部作のふたつめである「続・シン・ウルトラマン」は、庵野監督の『シン・仮面ライダー』という予定や「しばらく休みたい」らしいことを鑑みると、実現するにしても公開が2026~27年になってしまうのではないか。
さらに、2024年公開を目指すなら今ごろには既に始動していないといけないことからも、少なくとも2024年の一般向けウルトラマンは、少なくとも庵野作品ではないのではないか。
いや、そうであってほしい。
無論庵野さんは天才だと思うが、「一般層ターゲットの特撮」が庵野作品だけになってしまうのは、なんとなく不健全に感じる。
そういう意味で、「非・庵野」での一般向けウルトラマンが作られ、さらにヒットすれば、さらにウルトラシリーズ、ひいては特撮という文化の発展につながるのでは?という気がするのだ。
そういう意味で、『仮面ライダーBLACK SUN』や山崎貴監督の超大作怪獣映画(多分あいつだろう)にも期待しているし、庵野シン・シリーズではない一般向け大作ウルトラマンも実現してほしい。
もちろん、「続・シン・ウルトラマン」で庵野さんが「好きにする」のも実現してほしいけど……!

 

関連:よけば初代マンの感想記事もどうぞ。

 

 

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